2019/09/24

米国eHealthジャーナル 第4号

認知障害デジタル・バイオマーカーの有用性を示唆

認知症, 患者データ・疾病リスク分析, ジャーナル第04号, 疾病管理・患者モニタリング, ウェアラブル

 
 

Eli Lilly、Apple、Evidationの共同研究

Eli Lilly、Apple、そしてデジタルヘルス企業のEvidation Health(以下、Evidation)は8月8日、軽度認知障害(MCI)および軽度アルツハイマー型認知症患者の同定においてデジタル・バイオマーカーが有用である可能性を報告した。デジタル・バイオマーカーとは、デジタル・ツールから生成される消費者起点の行動データおよび生理学的データで、健康関連アウトカムに影響を及ぼしたり、健康アウトカムの説明や予測に役立てることが可能なものを指す。

60~75歳の113名を対象にリアルワールド環境下で12週間実施された3社の共同探索研究は、8月4日~8月8日にかけてアラスカ州アンカレッジで開催されたデータマイニングに関するAssociation for Computing Machinery(ACM)の国際会議、「25TH ACM SIGKDD CONFERENCE」において発表された。

同研究では、軽度認知障害(MCI)あるいは軽度アルツハイマー型認知症と診断された31名(以下、MCI群)と、そうではない82名を対象として、iPhoneおよびApple WatchなどのApple製品、そして評価のための専用アプリを利用した。そして、Evidation独自のヘルスケアデータ・プラットフォームである「Andromeda」を利用し、被験者からの同意取得や様々なデータの収集および分析を行った。具体的には、Apple製品がパッシブに収集する日常的なセンサーデータに加え、専用アプリを通じて実施した、精神運動性、リーディング、タイピングのテスト結果や、感情や気力に関する質問票への回答データなど、16テラバイトのデータを収集した。

結果、タイピング速度が遅くなる、朝の最初の歩行が定時ではない、もしくは遅い、テキストメッセージの利用頻度が低くなる、操作を助けるヘルプアプリの利用時間が長くなる、といった認知機能の低下に伴う複数の行動特性を同定することができた。


これらのデジタル・バイオマーカーは、MCIあるいは軽度アルツハイマー型認知症と診断された人々の病状のモニタリング、MCIの疑いがある人々の認知能力の変化の検出、治療法の有効性の検証、そして既存の診断ツールとの組み合わせによる診断精度の向上において役立つ可能性がある。

Evidationは、より良い健康アウトカムの達成に向け、データ収集および分析を行うカリフォルニア州拠点の企業で、デジタル・バイオマーカーの開発を目的にAndromedaを活用する複数の大規模試験を実施している。Eli Lillyは2018年12月にEvidationとの既存の提携契約を拡大、デジタル・バイオマーカーの発見を目的としたデータの大規模分析のために、「Andromeda」へのグローバルなアクセスを可能にする複数年契約を締結した。

 

(了)

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