2019/09/24

米国eHealthジャーナル 第4号

ニューハンプシャー州、メディケイド・テレヘルス償還を拡大する法律を制定

テレヘルス, ジャーナル第04号, 行政・規制ニュース

 
 

非都市部居住者に恩恵となるか?

ニューハンプシャー州のChris Sununu知事は8月12日、テレヘルスサービスを拡大する州法「SB 258」に署名したことを明らかにした。同州は、全米で広がるテレヘルス利用拡大に向けた規制緩和もしくは新規制導入の流れに加わった。SB 258は2020年1月1日から実効化される。

SB 258は、専門医のみにテレヘルス償還を認めるとしていた以前の州法案から対象を拡大する内容となっており、SB 258の下、プライマリーケア医や小児科医も2020年から同州メディケイド局および民間保険会社にテレヘルスサービスに対する保険償還を請求できるようになる。同法はまた、メディケアではテレヘルスの概念に含まれない「ストア・アンド・フォワード」や遠隔患者モニタリング(RPM)を定義し、両者ともにテレヘルスの1形式として同州メディケイドでの償還対象となることを明記した。ストア・アンド・フォワードとは、患者の医療データをいったん蓄積した後に、遠隔に転送し利用する非リアルタイムのテレヘルス。一方のRPMは、リアルタイムと非リアルタイムの両方がある。ストア・アンド・フォワードとRPMは、医師オフィスや病院以外の場所で提供される「ケア」を可能にする急成長のプラットフォームである。なおSB 258は、メディケイド償還の条件として、テレヘルス利用前に医師と患者の対面診療の実施を要請している。

テレヘルスサービス償還が限定的なメディケアとは対照的に、メディケイドでは数年前からテレヘルス償還に対する規制緩和が進んでいる(試読版1号(2019年6月発行)記事「米国におけるテレヘルス利用状況」を参照 ) 。8月6日にはオハイオ州のMike DeWine知事が、同州メディケイドプログラムに1,500万ドルを投下し、精神科医によるケアを必要とする生徒、学生に精神科テレヘルス・サービスへのアクセス向上を目指す計画を明らかにしたばかりだ。


Center for Connected Health Policy(CCHP)の調べでは、2019年5月末時点で、49州とワシントンDCにおいて、メディケイドにおけるリアルタイム・ビデオ対話への償還規定が存在する。また、メディケイドでは、ニューハンプシャー州のケースと同様に、ストア・アンド・フォワードやRPMを償還対象としている州も多い。CCHPは、保健福祉省(HHS)傘下の組織、HRSA(Health Resources and Services Administration)のテレヘルス推進室(Office for Advancement of Telehealth)が出資して設立した14のテレヘルス情報センターの1つで、テレヘルス政策に関連するリソースを提供している。

CCHPによると、マサチューセッツ州は全米で唯一、メディケイドにおけるテレヘルス規定を持たないが、同州のメディケイドサービスの多くは個々のマネージドケア組織(MCO)に運営を任せる形で提供されており、テレヘルスへの償還が一部で行われている可能性があるとCCHPは注記している。なお、マサチューセッツ州は2006年、当時のMitt Romney知事の下で州内皆保険制度を目指し、後に連邦政府によるヘルスケア改革法(PPACA、通称ObamaCare)のモデルとなるヘルスケア改革(RomneyCare)を実行、保険制度では先進州である。同州では既に、メディケイド局により、メディケイドで提供される精神科テレヘルス・サービスについてガイドラインが制定されており、メディケイドMCOでのテレヘルス償還が実施されている。Mitt Romney氏は2012年大統領選挙共和党指名候補で、前大統領のBarack Obama氏と大統領の座を争った政治家だ。

テレヘルスは、医療サービスプロバイダーへのアクセスがしばしば不十分である非都市部に居住する人々にとって恩恵となる。メディケアFFSでは、「テレヘルス利用の目的は、専門医が不足する非都市部において、患者に必要な専門医療サービスをリアルタイムで提供することにある」として、大都市統計地域(Metropolitan Statistical Area)をメディケア・テレヘルス償還の対象外としている。

SB 258の擁護派は、同法が非都市部に住むニューハンプシャー州民に新たな医療アクセスを提供すると主張している。同州では州人口の約37%が非都市部居住者である。しかしながら、USDAが2018年11月に発表した報告書は、都市部居住者と比較して非都市部居住者はテレヘルスの利用に積極的ではないことを指摘している。連邦通信委員会(FCC)は7月10日、低所得者層へのテレヘルス・サービス提供を目指し3年間で1億ドルを投下するConnected Care Pilotプログラムの実施に向け、一般からの意見を募るNotice of Proposed Rulemakingを発表したが(2号(2019年8月27日発行)記事「FCC、Connected Care Pilotプログラムについてコメントを募集 」を参照 ) 、同プログラムも非都市部居住者の医療アクセス改善を狙っている。

米国最大の民間保険請求データベースを保有するニューヨーク州ニューヨーク市拠点の非営利組織Fair Healthによると、テレヘルスの利用は、世代別では31~60歳の患者で利用率が高く、0~10歳を除く全ての年齢層で男性よりも女性の利用率が高い。

各州のメディケイド局やFCCが進めるテレヘルスの拡大は、資金投下や規制枠組みの制定だけでなく、患者へのアウトリーチが重要となるだろう。

 

(了)

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