2019/09/24

米国eHealthジャーナル 第4号

WW、ダイエットアプリ「Kurbo by WW」をリリース

テレヘルス, ジャーナル第04号, 疾病管理・患者モニタリング, デジタルセラピューティクス

 
 

親と専門家は大反対

WW(以前の社名はWeight Watchers)は8月13日、8~17歳の子供を対象としたダイエットアプリ「Kurbo by WW」の提供を開始した。Kurbo by WWは、WWが2018年に買収したKurbo Health(以下、Kurbo)のダイエットアプリに、若者に人気のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、Snapchat類似のインターフェースを採用し、呼吸法エクササイズ指導や、定期的な運動を奨励する「ストリーク」などを追加した新アプリ。ストリークとは、Snapchatにおける相手との連続スナップ交換状態を意味し、Snapchatではストリークが何日間継続しているかが炎の絵文字の左横に数字で表示される仕組みとなっている。 

Kurbo by WWでは、Stanford University開発の「信号機システム」を利用して食物を分類している。禁止されている食物はないが、青のフードアイテムは自由に食べてもよく、黄のフードアイテムは少量なら可能、そして、赤のフードアイテムは立ち止まって考える必要がある。
アプリのダウンロードは無料で、複数のツールも無料で利用できるが、1ヶ月69ドルのサブスクリプションフィーを支払えば、週に1回マンツーマンのオンライン・コーチングが受けられる。この15分間のビデオセッションは、ユーザとその家族全体の教育も意図されている。


(出典)Kurbo by WW
 

米国は肥満大国だ。公衆衛生の向上を掲げる連邦機関、CDC(Centers for Disease Control and Prevention)の最新データによると、2013~2016年の期間中、米国成人の38%がBMI値30以上と定義される肥満に該当していた。子供の肥満率も高く、2~19歳の子供の約20%が肥満だ。2019年6月時点で、FDAが承認した成人の肥満治療を適応とする処方箋医薬品は9剤あり、そのうち4剤が短期間の使用、5剤が長期間の使用で承認されている。しかし、2012~2016年の処方箋医薬品に関する調査では、成人の全肥満推定人口7,160万人のうち、処方箋医薬品使用者は年間平均66万人と推定され、また、同期間に減量を試みたと報告した成人のうち、処方箋医薬品使用者は約3%だった。

CDCによると、2013~2016年の間に16~18歳のティーンエイジャーの38%が過去1年に減量を試みたと回答しており、青年期のダイエット支援にはニーズがあると考えられる。その一方で、青年期のダイエットは、適切に行われないと、摂食障害や自己イメージの低下を招く恐れがある。American Academy of Pediatricsは、成長期の子供にマイナス影響が及ばぬよう、「体重」の話を避けて、「健康なライフスタイル」にフォーカスすることを進めている。

13歳から17歳を対象としたKurboの以前のダイエットアプリが大きな批判を招いたように、「Kurbo by WW」に対しても、専門家が非推奨を表明したり、子供のスマホから「Kurbo by WW」の排除を求める親たちのボイコット運動が展開されている。一部報道によると、ボイコット運動では7万8000名以上のオンライン署名が集められた。

WWは、ダイエット嫌悪の風潮がますます強まる中で自社の立ち位置を見つけるのに苦慮しており、今回の青年期へのフォーカスが適切なビジネス戦略であるかは定かでない。WWの株価は、昨年夏には103ドルまで上昇していたが2019年7月時点で20ドルを割り込み、8月に入ってからは30ドル前後で推移している。

 

(了)


目次に戻る
  

本誌掲載の情報は、公開情報を基に各著者が編纂したものです。弊社は、当該情報に基づいて起こされた行動によって生じた損害・不利益等に対してはいかなる責任も負いません。また掲載記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
Copyright © 2019 LSMIP事務局 / CM Plus Singapore Pte. Ltd.

連載記事

執筆者について

関連記事

関連記事はありません