2023/05/23

米国eHealthジャーナル第88号

Walgreens、臨床試験支援でProthenaと提携

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アルツハイマー型認知症患者の被験者登録と多様化を促進

米薬局チェーン大手のWalgreensとアイルランドのダブリン拠点とするバイオ製薬企業のProthenaは4月13日、Prothenaが開発するアルツハイマー型認知症(AD)治療薬候補、PRX012の臨床試験へのアクセス向上と被験者登録の加速、被験者人口の不均衡解消を目的に提携契約を締結したと発表した。PRX012は皮下注射型の次世代アミロイド標的モノクローナル抗体で、現在フェーズI試験段階にある。

合意の下、Walgreensは薬局店舗データならびに患者から利用に同意を得た臨床データを用いて、ASCENT-2と呼ばれるPRX012の臨床試験への参加資格を満たす患者とその介護者を特定し、試験について通知する。患者あるいは介護者が試験参加に興味を持った場合、被験者登録前のスクリーニングを実施する。

米国では650万人以上の高齢者がADに罹患していると見積もられており、特に黒人やヒスパニック系において、白人よりもAD発症リスクが顕著に高いことが複数の研究で示されている。しかし、AD治療薬の臨床試験参加者には人種別の傾向が反映されておらず、黒人やヒスパニック系人口の割合が不均衡に低いことが問題視されている。

Walgreensは、全米に展開する薬局9,000店舗の半数近くが、黒人やヒスパニック系の人口が比較的多い社会的に脆弱な地域にあることから、こうした患者に特有のニーズや、ケアを阻む障壁を理解したうえで、被験者登録を促す施策を効果的に実行できると考えている。

Walgreensは2022年6月、患者中心の3つのサービスラインを柱として、製薬企業が実施する医薬品開発研究への被験者アクセスと定着率の向上を支援する臨床試験事業を設立すると発表した。具体的には1)Walgreensが擁する広範囲におよぶ薬剤データと患者同意取得済みの臨床データを基盤とした、多様な患者集団と様々な疾患とのプロアクティブなマッチング、2)分散型臨床試験(DCT)技術として利用が可能な、Walgreens実店舗や提携先のデジタルサービスを通じた試験のワークフロー改善とデータ収集、および傘下のスペシャルティ薬局や、投資先の関連サービスを通じた、スペシャルティ医薬品のための新しい臨床試験アプローチの支援、そして3)リアルワールド・エビデンス(RWE)に基づく洞察、を提供する。


出典:Walgreens

一部報道によると、Prothenaとの提携は、同事業が手掛ける5件目の案件となる。Walgreens以外にも、薬局チェーンのCVS Healthや量販店Walmart、食品雑貨小売りのKrogerといった大手企業が、自社の薬局事業を活用して臨床試験を支援する事業を展開している。

Walgreensは4月10日には、多発性硬化症(MS)患者とその介護者を対象にした介護者支援サービスの提供でCariloopと提携したことを明らかにした。Cariloopは介護者支援ツールと専門家によるケアコーチングを組み合わせた介護者向けプラットフォームを持つ。提携により両社はMS患者とその介護者に対し、Walgreensが保有する神経学的製品に特化した専門薬局7店舗でCariloopのサービスを提供する。専門薬剤を利用する患者のケアの管理において、Cariloopが提携するMSケアの専門家がWalgreensの薬剤師の業務を補完する役割を果たす。両社はこのプログラムを2023年末まで実施し、その結果得られた洞察を踏まえ、提携の今後の展開を決定する。

(了)


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