2019/08/27

米国eHealthジャーナル 第2号

UCB、ソフトウェア企業のDEARhealthと提携

患者データ・疾病リスク分析, ジャーナル第02号

 
 

AI基盤のクリニカルパスによる疾病管理

UCBは7月2日、てんかん患者に対するケア提供の改善を目的として、価値に基づく疾病管理ソフトウェア企業のDEARhealthと提携したと発表した。UCBは、てんかんと関節リウマチの治療薬開発に特化する、ベルギーのブリュッセル拠点のグローバル製薬企業。抗てんかん薬であるVimpatやBriviactに加え、2019年5月には、てんかんを適応症とする鼻腔用スプレー、Nayzilam(一般名midazolam)の新薬承認申請(NDA)がFDAから承認を受け、同分野をさらに強化している。Nayzilamは経鼻型のbenzodiazepine系薬剤で、12歳以上のてんかん患者によく見られる断続的で定型的に起こる群発発作の急性治療を適応に承認された。同剤は、群発発作の治療を適応にFDA承認を受けた初の医薬品だ。DEARhealthは、てんかん研究のリーダー企業であるUCBの専門性を活用し、患者中心の新規ソフトウェア・ソリューションを開発する。

DEARhealthのソフトウェアシステムは、AI基盤のクリニカルパスによる疾病管理を可能にするもので、患者の電子医療記録(EHR)に統合される。クリニカルパスとは、医療における品質管理手法の1つで、ある治療において、患者の退院時または治療終了時における「あるべき状態」について目標を設定し、その目標達成に向けて医療従事者が行う検査、治療、投薬、処置、看護ケアなどの医療介入を標準化し、系統的かつ時系列に記述した診療計画を指す。


DEAR Healthは、University of California, Los Angeles(UCLA)のヘルスケアITスピンアウト企業で、慢性疾患管理のためのAI基盤クリニカルパスを実行する「サービスとしてのソフトウェア (SaaS)」を、AmazonのAWSクラウドプラットフォーム上で提供している。DEAR Healthのソフトウェアシステムは、患者経験と健康アウトカムの改善を図りつつ、医療費を削減することを目指している。DEAR Healthの最初のプロトタイプ製品は、炎症性腸疾患(IBD)を対象とするSaaSで、DEAR Healthによると、ペイヤー(保険者)との提携の下で実施された試験では、疾病再発率のみならず、救急医療(ER)利用と入院件数を著しく減少させ、医療費の削減に大きく寄与したことが示された。

慢性疾患患者のクリニカルパスは、エビデンスに基づいて用意された機能群と機械学習を利用して、既知の、そしてその疾病特有の健康リスクを継続的に考慮しつつ、自動的にリスク調整される。患者側のアプリは、患者報告アウトカム指標(Patient-reported outcome measures、PROM)や患者報告経験指標(Patient Reported Experience Measure、PREM)を収集するのみならず、治療へのモチベーションや服薬遵守率の向上を目的とする精神的サポートや、患者経験の向上につながるウェルネスおよび教育のコンテンツを含み、患者とそのケア提供者が主体的にクリニカルパスに関与するのを可能にする。患者由来のデータは、EHRのデータとともに、医療従事者が正確かつ迅速な個別化介入を提供するのを支援する。

 

(了)


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