2023/02/14

米国eHealthジャーナル第82号

Headspace Health、従業員の4%をレイオフ

Headspace, ジャーナル第82号, VC投資・M&A・決算, ウェルネス・運動療法, 精神疾患

経済減速と資金調達見通しへの暗雲を受けて

一部メディアは12月16日、包括的なメンタルヘルスケアをバーチャルで提供するデジタル・プラットフォーム大手のHeadspace Healthが従業員の約4%にあたる50名をレイオフ(一時解雇)したと報じた。Headspace Healthは、バーチャル・メンタルヘルスケア分野で大きなプレゼンスを有する2つの企業、HeadspaceとGingerの合併により誕生した企業で、メンタルヘルスケアのための包括的なデジタル・プラットフォームを擁する。2社は2021年8月に合併することで合意し、同年10月に取引を完了した。現在、世界190ヶ国の1億人超にリーチがある。同社の競合企業である瞑想/マインドフルネスアプリのCalmは8月、従業員の20%をレイオフしている。

新規株式公開(IPO)市場の閉鎖とともにベンチャー投資取引が急激に減少し、ここ1年は、多くの非公開技術企業が資金不足に陥っている。Headspace Healthは1月には人工知能(AI)基盤のメンタルヘルス/ウェルネスサービスを提供するSayana、9月にはBIPOC(Black, Indigenous, and People of Color)にフォーカスしたメンタル・ウェルネスアプリを手掛けるShineを買収するなど、これまで一貫して拡大を続けてきたが、不確かなマクロ経済環境と資金調達の見通しがますます厳しくなる中、レイオフを余儀なくされた。Sayanaは、AIチャットボットがユーザーとの対話を通じて、ユーザーの精神状態を把握・追跡し、認知行動療法(CBT)や弁証法的行動療法(DBT)、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)といったエビデンス基盤の治療法に根差したセルフケア・プログラムを、それぞれのユーザーに合わせて提供している。文化の多様性に配慮したインクルーシブなプラットフォームであるShineは、セルフガイド形式のコンテンツや、ストレスや境界といったトピックについてのセルフケアコースに加え、バーチャル・コミュニティ・ワークショップを提供している。


出典:Headspace

Headspace Healthのレイオフは、デジタルヘルス領域で起きている一連のレイオフの最新のものとなる。ロシア・ウクライナ戦争や、米国で急速に進むインフレとその対応としての利上げなどを背景に、投資家の弱気姿勢が強まって株式市場全体が軟調に推移する中で、世界の新興テクノロジー企業は現在、試練に直面している。ハイテク株安とIPO市場の低迷によって資金調達のハードルが上がっており、スタートアップ企業が生き残るためには、レイオフに踏み切らざるを得ない状況だ。この状況は今後もしばらく続く見通しで、ベンチャー・キャピタル(VC)ファンドはポートフォリオ企業に対して、戦略を成長から生き残りへとシフトするよう警告している。

Headspace Healthのほかにも、テレヘルス/ヘルスケア・ナビゲーションプラットフォーム企業のIncluded Healthや、デジタル・セラピューティクス(DTx)企業のPear Therapeutics、消費者直販(DTC)テレヘルス・プロバイダーのRoman Health Ventures、オンライン薬局のCapsule、家庭用診断キット開発企業のCue Health、ハイブリッドケア・プロバイダーのCarbon Health、家庭用フィットネスバイクのPeloton、ダイエットアプリのNoom、小児およびティーンエイジャー向けのデジタル・メンタルヘルスケア企業Brightlineなどが、レイオフの実施を明らかにしている。

(了)

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[編集部メモ]
2023/01/31 付けのプレスルーム ( https://www.lsmip.com/article.html?id=7573 ) で速報している通り、Headspace社はサービスを米国外のグローバル市場にも展開してゆく計画を明らかにしている。


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