2022/11/22

米国eHealthジャーナル第77号

Rock Health、デジタルヘルス投資トレンド報告書を発表

VC投資・M&A・決算, Rock Health, 研究・調査, ジャーナル第77号, 提携

2022年第3四半期のデジタルヘルス投資は減速

デジタルヘルスに特化するベンチャー・ファンドのRock Healthは10月3 日、デジタルヘルス領域における2022年第3四半期のベンチャー・キャピタル(VC)投資トレンドを分析した報告書を発表した。同報告書によると、2022年第3四半期には125件のVCディールに対して総計で22億ドルの資金が投下された(Rock Healthでは200万ドル以上のVCディールのみを集計)。第3四半期の資金調達実績は2019年第4四半期以降で最も少ない水準にとどまった。

報告書によると、これまでの9カ月間には458件のディールに対して126億ドルの投資が行われた。9カ月間のディール平均投資水準は2,740万ドルだった。2021年は、ディール平均投資水準(3,970万ドル)および総資金調達額(292億ドル)ともに過去最高を記録した年となったが、2022年に入ると減速傾向が浮き彫りとなり、四半期が進むごとに落ち込みが加速している。第3四半期の総資金調達額は直前四半期比で48%減だった。このペースで減速が進むと2022年通年の総資金調達額は前年の半分にも満たない水準に留まる可能性もあるという。

なお、第3四半期のディール件数については直前四半期比で14%減にとどまり、金額ベースほどの激減は見られなかった。Rock Healthの分析によると、小規模かつ初期段階のスタートアップ企業を対象としたディール件数は比較的安定しており、ディール件数の減少というよりも、ディールサイズの縮小が第3四半期全体の実績を押し下げる結果になった。第3四半期にはシリーズC以降の投資ディールは6件にとどまり、四半期全体のディールボリュームに占める割合は5%未満だった。後期段階スタートアップ企業を対象としたディールが減少する中で、投資家はポートフォリオを充実させるために、初期段階スタートアップ企業への投資機会を積極的に模索しているという。 そのほかにRock Healthは、シードからシリーズAまでのディールにおいては、パンデミック前の資産評価に徐々に戻りつつあることを指摘している。「合理的な価格」は、市場の長期的健全性を促進するものだ。

治療分野別の投資活動については、メンタルヘルス分野に注力するスタートアップ企業への投資金額が引き続きトップを占めているが、複雑な疾病分野への注目も高まっているという。癌治療に取り組むデジタルヘルス・スタートアップへの投資は総額9億4,600万ドルで2位となった。癌患者向けのプレシジョン栄養プログラムをデザインするFaeth Therapeuticsは、SG2 Ventures が主導したシリーズA投資ラウンドで4,700万ドルを調達している。


出典:Faeth Therapeutics

Rock Healthはこれまで、「2022年のデジタルヘルス投資は、記録的な年となった2021年と比較すると縮小しているものの、依然として2020年の投資実績を上回るペースで推移している」と説明し、「2021年が異常値であり、複数年に渡る投資トレンドとして見る場合、全体的にはデジタルヘルス・スタートアップへの投資が引き続き拡大傾向にあることが見て取れる」と述べていた。しかし対照的に今回の報告書では、「2021年からの調整期間とも読める第1四半期や第2四半期とは異なり、第3四半期は、デジタルヘルス金融市場において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに牽引された一連の変化からの明確な脱却が見て取れる」としている。COVID-19のパンデミックは、テレヘルスや遠隔モニタリングツール、デジタル・セラピューティクス(DTx)開発企業にとって追い風となったほか、メンタルヘルス分野の重要性を浮き彫りにした。Rock Healthはパンデミックの収束に伴い当期に確認された変化として、市場ダイナミクスの変化、ワークフロー支援や複雑な疾患といった分野への投資フォーカスのシフト、新規技術および没入型ソリューションに対する期待の高まりなどを挙げた。

Rock Healthは、2023年に向けてどのトレンドが定着し、市場を形成していくかを把握するために、第4四半期を注意深く見守る必要がある、と述べた。

(了)


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