2022/11/08

米国eHealthジャーナル第76号

メンタルヘルスアプリに対する専門家と一般消費者の評価の一致度は低い

ジャーナル第76号, 研究・調査, 医療コミュニケーション支援, AI技術, 精神疾患

専門家はメンタルヘルスアプリを過大評価しがち

オープンアクセスのオンライン・ピアレビュー医学誌、JMIR(Journal of Medical Internet Research)に9月23日付で掲載された研究「Comparing Professional and Consumer Ratings of Mental Health Apps: Mixed Methods Study」によると、メンタルヘルスアプリに対する専門家の評価と一般消費者の評価の一致度は低い。

ロンドン大学およびカリフォルニア州立大学アーバイン校の研究者らを含む研究班は今回、2020年12月から2021年4月の間に実施されたウェブ調査を用いて、11のメンタルヘルスアプリを評価した。評価対象とされたのは、「Breethe」、「Calm」、「Headspace」、「Insight Timer Meditation」、「MindDoc」、「MindShift」、「Reflectly」、「Remente」、「Sanvello」、「Self-Help for Anxiety」、「Woebot」の11アプリ。

これらのアプリは全て、不安やうつ、不眠症などのメンタルヘルス問題に対処するものだが、瞑想やマインドフルネスの手法を基盤とするもの(Calm、Headspace、Breethe、Insight Timer Meditation)、頭に思い浮かんだことをありのままに書き記すことで自分を知り、ストレスを軽減する「ジャーナリング」を基盤とするもの(Reflectly、Remente、MindDoc)、認知行動療法(CBT)を基盤とするもの(Woebot、MindShift、Sanvello、Self-Help for Anxiety)の3つのカテゴリーに大別することが出来る。CBT基盤のアプリのうちWoebotは、人工知能(AI)基盤のチャットボットとの会話を通じてユーザーとの間に「絆」を構築するもので、個々のユーザーの健康や精神状態を把握した上で、ユーザーのニーズに合致するデジタル・レッスンが提供される。

出典:Shutterstock

一般消費者レビュアー21人は、メンタルヘルス問題の既往歴を報告した上で3種類のアプリをダウンロードし、3日間使用した。研究に参加した21人の内訳は、ほとんどが大卒の女性で、民族的には多様であった。研究班が一般消費者のアプリ評価を、臨床医やアカデミアの専門家の評価と比較した結果、全体としてアプリ評価の半分以上で、一般消費者と専門家の評価との間に不一致が見られた。専門家は、一般消費者レビュアーと比較して、アプリに高い星評価をつけ、他の人にアプリを薦める傾向も強いことが分かった。

一般消費者は、自身のメンタルヘルスを追跡・測定したり、進捗状況を把握できる機能、また、対処法や症状に関する情報などを含む教育コンテンツへのアクセスを高く評価した。また、多くの人はプレミアムコンテンツを利用するために支払いの必要が生じたときに不満を感じていたことが明らかになり、一般消費者にとって最も重要なテーマの1つがコストであることが浮き彫りとなった。

「被験者はアプリの機能性を非常に重要視しており、使いやすく、インタラクティブで、パーソナライズできるさまざまな機能を高く評価していた」と、研究班は述べた。また、アプリの美観も非常に重要で、魅力的な色彩とシンプルな構造を備え、プロフェッショナルな印象を与える見た目のアプリが好まれることも明らかにされた。一般消費者からの否定的な意見が最も多かった項目は「使いにくさ」だった。専門家の評価は、アプリの使いやすさを過大評価していることが示唆された。

(了)


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