2022/03/22

医学博士が解説するリハビリテーションとデジタル技術(第1回)

ニューロリハビリテーションの現場からみる『EsoGLOVE™』への期待(前編)

ウェルネス・運動療法, シンガポール, 医療機器

脳卒中後遺症治療の新たなスタンダードの確立に向けて

 

(出所: Roceso Technologies Private Limited)

次世代のニューロリハビリテーション
日本における脳血管疾患(脳卒中)の患者数は約112万人にのぼり 1)、介護が必要になる原因疾患の第2位となっています 2)。また、脳卒中の代表的な後遺症である運動麻痺は患者の復職や社会復帰、日常生活の自立を困難にするため、脳卒中発症後のリハビリテーションは欠かすことはできません。
最新の脳科学に基づいた医学的根拠の高い脳卒中リハビリテーションを「ニューロリハビリテーション(以下、ニューロリハ)」と総称し、近年、セラピストによる徒手療法中心の時代から、様々な道具を併用した次世代型ニューロリハの時代へと進化を遂げています。ニューロリハの概念が臨床家の間に浸透してから月日が経ちますが、道具を併用した次世代型ニューロリハの実践に関しては、エビデンスも不十分であり、過渡期にあると考えられます。

Roceso Technologies社によるEsoGLOVE™の開発
シンガポールに拠点を置くRoceso Technologies社は、テクノプレナーであるMs. Jane WANGとHong Kai YAP博士、Raye YEOW博士によって2016年に設立され、ソフトロボティクスの分野において世界をリードしています。特に神経科学に基づいたリハビリ支援ロボットを数多く展開しており、その中心を担っているのが「EsoGLOVE™ Hand Rehabilitation System」です。EsoGLOVE™は2018年12月にFDAで承認を受け、EUやオーストラリア、日本と各国にシェアを広げています。

(出所: Roceso Technologies Private Limited)

ニューロリハの課題とリハビリテーションシステムEsoGLOVE™
1.課題指向型アプローチ
ニューロリハにおいてエビデンスが高い治療として知られるのが、課題指向型トレーニングです。これは、指の運動麻痺に対する治療で例に挙げると、単純に「グー、パー」と動かすよりも、「テーブルの上のボールをつかんで箱に入れる」といった目的をもった運動の方が治療効果が高い、といったものです。しかしこの課題指向型トレーニングには、運動麻痺の患者が複雑な運動をおこなうにはセラピストの補助やこまめな難易度の調整が必要となり、その精度はセラピストの経験に依存するといった課題があります。
また、現在の四肢運動機能の治療法やソリューションは、非常にかさばり、セットアップに時間がかかります。患者に装着するプローブが大きく動かしにくい、コードが邪魔になる、持ち運びが不便といった理由から、十分に日常診療に普及しているとは言えないのが現状です。実際に、ニューロリハの経験のあるセラピストの中には、思うように個別の筋の収縮を促すことができず、歯がゆさを感じている方も多いのではないでしょうか。

2.EsoGLOVE™ System
これらの課題を解決に近づけるのが、EsoGLOVE™ Systemです。これは手のリハビリテーションと補助を目的とした、Exoskelton(外骨格)型空圧式ロボティックグローブのリハビリテーションシステムです。患者が装着したグローブが、指の曲げ伸ばしや細かい動きを補助し、連続他動運動やアクティブアシスト運動によって、課題志向型トレーニングを行うことができる医療機器です。
EsoGLOVE™のグローブ自体は軽量(150~180g)であり、機能的なタスクトレーニングを可能にし、快適性にも優れています。また、簡単に持ち運べるため、病院や診療所の他、家庭でも使用できます。脳卒中などの神経障害を持つ患者に、安全な環境で日常的なリハビリの継続を可能にします。


(出所: Roceso Technologies Private Limited)

後編ではEsoGLOVE™の詳細な仕様や、EsGLOVE™を用いた臨床研究の結果についてご紹介します。

(次回へ続く)


【出典】

1) 厚生労働省、 「『平成29年(2017)患者調査の概況』 5 主な傷病の総患者数」、https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/dl/05.pdf
2) 厚生労働省、 「『平成28年 国民生活基礎調査の概況』 IV 介護の状況、2 要介護者等の状況」、 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/16.pdf

この原稿の執筆に際し、掲載企業からの謝礼は受けとっていません。


【Roceso Technologies】


Roceso Technologiesは、ソフトロボット外骨格技術の世界的パイオニアであり、神経系技術のリーダーである。同社のソフトロボットによるソリューションは、リハビリテーションや日常生活において、四肢の運動機能に障害を持つ患者に機能的な支援を提供している。同社の主力製品EsoGLOVE™は、最高の機能性と快適性を提供する世界最軽量のハンドリハビリテーションおよび外骨格デバイスの1つ。ハンドリハビリテーションシステムEsoGLOVE™はFDAに登録され、EU(CE)、シンガポール(HAS)、日本(FDA)、韓国(FDA)、マレーシア(MDA)、オーストラリア(TGA)で承認されている。また、EsoGLOVE™の他にも、リハビリテーション評価技術、ゲーミフィケーション技術、プラットフォーム技術を提供。世界中に臨床パートナーを持ち、10カ国以上に販売網を持つ。日本では、インターリハ株式会社(https://www.irc-web.co.jp/)がディストリビューションパートナーとなっている。


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